己の足らざるところ、知らざるところを知る。
その意味について、字面を追って、なるほどそうかと分かったつもりでいたことですが、いやいや、そんな薄っぺらいものではないと、最近しみじみ思うようになりました。
独立して、いろいろな企業、担当部署の方々にお目にかかるようになりました。
そちらの課題解決のお手伝いをさせていただくのが、今の私の仕事なのですが、この課題が、それぞれなかなか奥深いのです。
各組織には、それぞれ固有の土壌があり、その土壌を前提にしなければ、どんなカリキュラムや資料を作ってもうすっぺらで、およそその組織の人の心に残りません。
今お世話になっている研修エージェントの担当さんが、
「受講者の満足度」
という言葉を使われます。
字面だけ見ると、
「そんなの当然でしょ。CS(顧客満足)なんて、今や当たりまえ。」
と思うでしょうが、これを実現するとなると、なかなか手ごわいのです。
満足度を上げるには、受講者ニーズに合致するものを提供すればよい。
これもまた、当然でしょと言われそうです。
では、何が受講者ニーズに合致するのかと考えてゆくと、表面的に表れている、例えば「提案力の向上」という顕在的ニーズにだけ応えたのでは、おそらく合致したと、受講者は思ってはくれないのではないでしょうか。
昨日、とある企業で、「提案力強化」を目的とした研修を担当しました。
研修そのものは、1日で終了ですが、その準備にかかった時間は、おおよそですが、5倍以上にはなっているはずです。
該当業種の特性をよく調査して、先方企業の担当の方とよくよく打ち合わせをして、作成資料のチェックをしつつ、ようやく研修資料を作成しました。
この過程で、「先方企業の、受講者の働く環境や、必要とされる能力について、ざっくりとしか知らない。」ということに、気づかされます。
知らないものは、できるだけ知ろうとするべきだと考えて、積極的に先方の担当の方にコンタクトを取り、潜在的に求めているだろうものは何か、それこそものすごく一生懸命に考えました。
そして出来上がったのが、現場で取り扱うだろう事例を基にした、提案力の強化というモデルです。
企業のホームページやパンフレットを読み込んで、できるだけ現実に近いものに仕上げました。
これで完璧などとは、けして思っておりません。
私の座右の銘は、「温故知新」なのですが、これに今後は「無知の知」を加えようと思うこの頃です。