無知の知は、楽しい

己の足らざるところ、知らざるところを知る。
その意味について、字面を追って、なるほどそうかと分かったつもりでいたことですが、いやいや、そんな薄っぺらいものではないと、最近しみじみ思うようになりました。

独立して、いろいろな企業、担当部署の方々にお目にかかるようになりました。
そちらの課題解決のお手伝いをさせていただくのが、今の私の仕事なのですが、この課題が、それぞれなかなか奥深いのです。

各組織には、それぞれ固有の土壌があり、その土壌を前提にしなければ、どんなカリキュラムや資料を作ってもうすっぺらで、およそその組織の人の心に残りません。
今お世話になっている研修エージェントの担当さんが、

「受講者の満足度」

という言葉を使われます。
字面だけ見ると、

「そんなの当然でしょ。CS(顧客満足)なんて、今や当たりまえ。」

と思うでしょうが、これを実現するとなると、なかなか手ごわいのです。

満足度を上げるには、受講者ニーズに合致するものを提供すればよい。

これもまた、当然でしょと言われそうです。
では、何が受講者ニーズに合致するのかと考えてゆくと、表面的に表れている、例えば「提案力の向上」という顕在的ニーズにだけ応えたのでは、おそらく合致したと、受講者は思ってはくれないのではないでしょうか。

 

昨日、とある企業で、「提案力強化」を目的とした研修を担当しました。
研修そのものは、1日で終了ですが、その準備にかかった時間は、おおよそですが、5倍以上にはなっているはずです。
該当業種の特性をよく調査して、先方企業の担当の方とよくよく打ち合わせをして、作成資料のチェックをしつつ、ようやく研修資料を作成しました。
この過程で、「先方企業の、受講者の働く環境や、必要とされる能力について、ざっくりとしか知らない。」ということに、気づかされます。
知らないものは、できるだけ知ろうとするべきだと考えて、積極的に先方の担当の方にコンタクトを取り、潜在的に求めているだろうものは何か、それこそものすごく一生懸命に考えました。
そして出来上がったのが、現場で取り扱うだろう事例を基にした、提案力の強化というモデルです。
企業のホームページやパンフレットを読み込んで、できるだけ現実に近いものに仕上げました。

これで完璧などとは、けして思っておりません。
私の座右の銘は、「温故知新」なのですが、これに今後は「無知の知」を加えようと思うこの頃です。

 

 

年輪の品格は素敵

先週のことです。
あまりに暑いのと、資料作成作業が続いて少し疲れ気味だったのと、言い訳をたくさんしながら、お寿司屋さんに行きました。
特上のにぎりセットを頼んでも、2500円~3000円のお寿司屋さんです。
もちろん、私が特上を頼んだりしたわけではありません。

そのお店は、こんな状況になる前から、ゆったりとした座席配置のお店で、お値段も前述したとおりなので、老若男女年齢層は幅広い。
その日、私の隣りの少し離れたテーブルには、おそらくは60代後半から70代前半かなというご夫婦がおいでになりました。
二人で仲良く料理をつまみながら、いくつか追加注文なさった後のこと、妻が席を立ちました。
一人になった夫が、お店の方に

「これを下げていただけますか。」

と穏やかな声でお願いしたのです。

あの年齢で、あんな丁寧なおしゃべりをする方が、ここ広島にもいるのねと、少し驚いて、それ以降なんとはなしに、その夫に注意がむいていました。
妻が帰ってきて、お酒が運ばれてきて、

「おめでとう!」

盃を上げて、妻がそう言うと、

「ありがとうございます。」

照れくさそうに、夫が答えます。

 

この光景に心が洗われるような気分でした。
二人とも、穏やかな声でお話しなさるのですが、とてもとても楽しそうです。
夫のお祝いに、少しだけ贅沢をしてお寿司屋さんに来たのでしょう。
ブランドの服やバッグで身を飾っているわけでもなく、ごく普通のスラックスとポロシャツのような恰好でしたが、そこはかとなく品格が漂います。

「年をとると、いろいろなことが顔に出る。
見た目も、年をとると本人の責任でもある。」

昔、年長の女性がよく言っていたことです。
それを思い出しました。

いつか私が、あのくらいの年齢になった時、あんな風に穏やかな品の良さを身につけられていたらいいと思います。
日々ありがたいと感謝しながら暮らせば、ああいう風になれるのでしょうか。
日々、できることを努力しながら暮らせば、ああなれるのかなあ。
なんにせよ、穏やかに暮らすとは、これ、究極の幸せだと思います。
本当に素敵でしたよ、あのご夫婦。

 

 

 

Webミーティング活用法

弊社事務所のあるビルは、11階建ての古いマンションです。
広島市の中心部へも歩いて行ける便利の良い場所にあるため、建設当初から住まわれている方々も少なくない、そんな建物です。
管理会社へ管理を全部委託するのではなく、積極的に管理組合が関与しているので、古いわりには、メンテナンスの行き届いた快適な建物だと思います。

では何が問題なのか。
自分たちの財産(マンションの区分所有権)を維持管理するための活動が、コロナ対策が必要になった昨今、なかなか思うようにいかないことでしょう。

大きな企業であれば、あるいはIT化に馴染みやすい方々ばかりであれば、

「なんだ、そんなの。
Web会議にすればいいじゃん。」

といとも簡単に切り替えられるでしょう。

ご存じのように、Web会議自体は、たいして難しいものではありません。
無料のアプリを借りて、主催者が設定すれば、ほかの人々は参加するだけです。

けれど、企業でもなく、IT化に馴染みやすい人々ばかりではない一般の小さなコミュニティでは、家にパソコンがないとか、インターネット回線がないとか、スマホを持っていないとか、そもそもITに抵抗があるとかが、まだまだあるのです。
そうなると、小さな部屋に理事が集まって討議する、旧来のスタイルを変えるのはとても難しい。

当分は解決しそうにない問題だとは思いますが、個人的には、ネット環境(従量制ではない環境)がある理事だけでも、自宅から理事会に参加できれば、人の密度が小さくなるのではと思います。
管理会社が主催したWeb会議に、理事会を開催するメイン会場と、自宅数か所をつなげば、実現できるのではと。
もしそうなれば、身体の調子が思わしくない方も、参加できる。
良いと思うのですが、ご理解を得るのには、なかなかハードルが高いものだなあと思うこの頃です。