何事も極めれば美しい

今週の水曜日のことです。
用を済ませて、広島駅から事務所へ帰るバスを使いました。
すぐに降りるので、一番前の席に座ったところ、運転席のドライバーに視線がいって、軽くびっくり。
女性、しかも若い女性だったからです。

ご存じのこととは思いますが、路線バスの運転手を務めるには、大型免許、しかも2種が必要です。
自動車免許の最高峰、最難関の免許を、彼女は持っているのです。
制服の白いシャツの袖は、パフスリーブ(ふくらんだ袖)ではなく、なんの変哲もない筒袖ですが、その袖の中で泳ぐようなほっそりとした長い腕と手が、むき出しの長いギアを自在に動かして、大きな車体を驚くほど静かに動かしてくれます。
信号待ちの停車なんて、本当に穏やかですすーっといつのまにか止まる感じでした。
がくんとした揺れは、まるでない。

一番驚いたのは、途中で寄るバスセンターの構内でした。
狭いターミナルには、たくさんのバスがひしめいているので、停まるべき場所に先行の車両がまだ停まっているいることもあります。
その日もそうでした。
その場合、少し離れた場所に待機所があって、そこで先行車両が発進するのを待つのですが、その待機所というのがまたすごく狭いのです。
白い枠線で、バス1台がやっと入れるくらいを囲ってあります。
そこに彼女は、ぴたりと、しかも一度で、綺麗におさめてしまったのです。
大きな図体の、彼女の相棒を。
お恥ずかしながら、私など自宅マンションの立体駐車場に入れるだけでも、幾度かハンドルを切りなおします。
比べるのもおこがましい話なのですが、本当にほれぼれするほど華麗な腕でした。
当然のことながら、その間、がくんと揺れることなど一度もありませんでした。
そして先行車両が発進して、ようやく停留場所へ進めるようになると、また静かにすいっと動きます。
誰かに憧れるという感情を、この時思い出しました。

降車時、Paspy(チャージされた交通カード)で支払いを済ませた私に、

「ありがとうございました。」

そういいながら向けられた笑顔のさわやかで美しかったこと!
後ろで無造作に束ねられた長い髪と、切れ長の目が印象的な素敵な方でした。
安全安心に運んでくださって、こちらこそありがとうございます。
久々に心が高揚した、良い出来事でした。

安全帯はカッコいい!

 

高所作業における安全帯、通称胴綱(どうづな)の仕様が、変わりました。
2022年1月2日以降、旧規格の安全帯は使用不可になるので、高所作業を必要とする現場をもつ会社では、新規格の安全帯の着用研修(訓練)を展開しているようです。

新規格、フルハーネスと呼ばれる安全帯は、太ももや背中を全部支えてくれるパラシュート着用時のようなベルトです。
初めて画像を見た時、

「パラシュートみたい。」

と思いました。
従来のものに比べると、全身をがっちり支えてくれるので、安全性は格段に上がっています。
いますが…、おそらく装着は少し大変でしょう。
しばりがあちこちにあるというのは、安全である反面、手間はかかるもの。
従来型の安全帯に慣れている方々には、すこしばかり抵抗があるのではとお察しします。
けれどこれを着けていれば、落下事故の危険からより遠ざかるそうです。
命とひきかえですから、多少の手間は勘弁していただきたいところです。

それにしても、です。
会社員時代から感じていたことですが、こういう安全帯を着用して作業する方々の、なんと颯爽としてかっこいいことでしょうか。
手慣れた風に、ちゃちゃっと金具をつけて確認して、そして高所作業車や電柱に上ります。
下から見上げて、いつもほれぼれとしていたものでした。
旧規格の腰に巻き付けるタイプのものもかっこよかったのですが、今回のフルハーネスは、まるで宇宙飛行士か航空機(客用ではない)のパイロット、いやいや正直に本音で語りましょう。
ガンダムに出てくるモビルスーツのパイロットのようで、ますますかっこいい。
命を守る安全具に、こんなうわついたことを言って大変申し訳ありませんが、本心です。
日々作業に着用なさる方は、そんなこと考えたこともないでしょうが、はために見ると、あなた方はとてもとても颯爽としてかっこよいのです。
新規格安全帯、より安全に命を守ってくれるフルハーネスを、どうか面倒がらずに着用なさってください。
アムロレイかシャアアズナブルか、ララアスンか。
はためには、きっとそんな風に映っていますから。