ちょっと待って!それ、本当にクレーム?(4)

考えられる理由として、3つ考えられます。
経験不足
一次対応をするオペレータから二次対応をするリーダーまたはスーパーバイザ(コールセンタのマネージャー職)に上がったばかりで、二次対応の経験が不足していた。
研修は受講していたが、実践になると「クレーム」と構えてしまい、つい自分の言いたいことばかり言ってしまった。
研修をそもそも受講していない。

3つの理由のうち、3はおそらくどの企業でもないと思います。
1も、経験値が上がれば解決する問題なので良いとします。
2が、一番厄介な問題です。
2については、個人の資質に頼るところが大きいと、残念ながら思うからです。
お客様の感情に寄りそうことが上手な人は、お客様の微妙な間合いや沈黙、口調などから、お客様の感情を読み取ります。
これは経験によるところも大きいのですが、それだけではありません。
個人の資質によるところも大きいものだと思います。
だから本来は、できるだけこの資質のある人を、二次対応にまわしたいところですが、こういう資質のある人は、たいてい他の業務もできるので、さらに他のセクションへ転属されてしまうことが多いように見えます。
企業としては、なんとかして資質の乏しい人にも、お客様の感情を読み取り共感するセンスを身に着けてもらわなくてはならないわけです。
そこで研修、モニタリングによるコーチング等、電話受付をする部署においてはかなりの高頻度で行っていることでしょうが、なかなか思うようにいかないのが実態でしょう。
その原因の1番大きなものが、冒頭で書いた「クレーム=怒鳴られる=怖い」という図式が頭の中にあることだと考えます。
二次対応者の場合、電話を受ける(かける)場合の多くが、なにかしら問題があった場合の対応になるので、
「またクレームかよ。」
となるのは、わからないではありません。
そこで、明日からできる改善法として、これはいかがでしょうか。
「本当にクレームか?
もしかすると、確認だけとか、勘違いとかかもしれない。
よく確認しないとな。」
電話に出る前に、これを自分に言い聞かせるのです。
一呼吸おいて、そう自分に言い聞かせるだけで、心の余裕が違います。
もし仮に電話に出るなり怒鳴られたり、不機嫌だったりした場合は、自分が怒鳴られていると考えず、怒鳴られている対象を良い意味で突き放します。
そして、
「どんな感情がこの人を怒らせているのだろう?」
と考えると、冷静になれます。
怒りは二次感情であって、その底に一次感情である「不安」とか「悲しい」とか「悔しい」とかがあります。
そこを理解すれば、対応は楽です。
これはアンガーマネジメント的な発想です。
そしてさらにそうなった前提に、「正当な権利」を侵害されたという事実があるのかもしれません。
人の感情を読むことが上手な人の資質を、上のような理屈で習得するのです。
二次対応が苦手なリーダーやSV(スーパーバイザ)その他管理者の皆様、騙されたと思ってちょっと試してみてください。
「そのクレーム、本当にクレームですか?」

 

前へ

ちょっと待って!それ、本当にクレーム?(3)

<前事例の問題点>
一次対応者の引継ぎ内容
一番最初に電話を受けた方(一次対応者)が、このリーダー(二次対応者)に何をどのように伝えたのかです。
一次受付の仕事は、ユーザーの氏名、折り返し電話番号、問合せ内容を、ただただ客観的に事実のみを伝えること、これに尽きます。
ここで「クレームみたいですよ。」とか「めんどくさい感じですよ。」とか、主観を加えると、二次対応者に嫌でもバイアスがかかります。
二次対応者の最初の対応姿勢
二次対応者は、引継ぎを受けた内容を簡単にお客様に説明した後、
「お客様のお問合せ内容は、この理解で正しいですか?」
等、確認をしてお客様側に納得してもらう必要があります。
これをすることで、引継ぎ内容にかかったバイアスを取り除くこと、聞き間違い等を修正することができます。
また同時に、お客様に反論(付け足し)の機会を与えるので、お客様の方に、一方的に話を進められたという不満が起こりません。
傾聴姿勢
ここからは、お客様に主に話していただき、お客様にとって何が問題なのかを明確にする必要があります。
上の例でいえば、お客様の「不安」を探り当てたら、話が早かったと思います。
「それはご不安でしたね。
そのような思いをおさせして、申し訳ありませんでした。」
一度は、相手の感情をうけとめ、肯定します。
その後、自社側のシステムの説明に入れば、お客様側の態度も違ったのではと思います。
よく聞く「Yes,But」の話法です。

おそらくこのリーダーさん(二次対応者)も、このような研修を受講していたはずです。でもできなかった。
これはどうしてでしょう。

 

前へ  次へ

ちょっと待って!それ、本当にクレーム?(2)

そもそもクレームとは何かから、始めます。
商取引で、売買契約条項に違約があった場合、違約した相手に対して損害賠償請求を行うこと。
苦情。異議。
出典「デジタル大辞泉」(小学館)
俗に「クレーム対応」「クレームを言う」等の使い方をするのは、2の「苦情、異議」の方でしょう。
けれど苦情の前提に、言う側に1の「正当な権利の要求」という意識があることもあるのです。
(事例)
ある士業の事務所を経営しているユーザーW(男性)が、自分の不在時の電話受付を代行サービスの会社に依頼していました。
もし電話があれば、メールで内容を伝えてくれるというサービスです。
1年間使って、とても便利なサービスだったので、彼は満足して使っていました。
ところがある日のメールを見て、彼は少し不安になったのです。
「11:10
Y様あて
〇〇社〇〇様より
~~~~~の案件について、メールをくださいとのことでした。
申し伝えますと回答。」
気になったのはY様という、宛名でした。
Yという人物は、彼の事務所にはいません。
彼一人でやっている事務所だったからです。
〇〇社は彼の大事なクライアントです。
もし受付時に、「はい、Yでございますね。」と応対していたら困るなと思いました。
そこで受付代行の会社に、仔細を確認することにしました。
最初に電話に出た人に、ことの仔細を話すと
「担当者がおりませんので、おりかえしお電話します。」
といったん終わり。
30分後、実際に対応した人のリーダーらしき人から電話がありました。
いわく、
通話録音を聴いてみたが、その電話を受けた際に雑音が入って名前がはっきり聴き取れなかった。聴きとれた名前のまま、復唱した。相手もそれで何かいうわけではなかったので、無事に終了した。
まあ、こんなことをまくしたてたのだそうです。
一方的に自社側の状況説明から入ってこられたことに、彼は気分を悪くしましたが、一番気になることを聞きました。
「回線状態が悪かったり、いろいろ事情はその時々であるでしょうが、おそらくうちの事務所の代表者の僕の名前は、受け付ける方には知らせてあるんでしょう?
聴き取れなかったら、『もう一度おうかがいできますか?』とかは言わないのですか?」
そうすると、リーダーらしき男性はこう言ったそうです。
「それは別スクリプトなので、オプション料金をいただくようになります。」
リーダーさん、ちょっと残念な対応ですね。
平たく言えば、「あ~あ、やっちゃった。」という感じです。
この後、彼はなじみの営業担当に電話を替わってもらい、初めから話しなおしてようやく納得のゆく説明を受けたようです。
では、どこがまずかったのでしょうか。

 

前へ  次へ

ちょっと待って!それ、本当にクレーム?(1)

役所や会社、個人商店等、どんなところに勤めても、最近では珍しくないのが「クレーム」です。
ほとんどの場合、サービス(商品も含む)に対する苦情(平たくいうと不平不満怒り)を指して使われる言葉です。

「あ~、朝からクレーム受けちゃったよ。」
「〇〇(関連会社)のやったことなのに、うちに言われてもね~。
しんどかったわ~。」

もっと生々しい声もありますが、それは書かないでおきます。
自主規制ということで。
一般的に言って、誰かに文句を言われることの好きな人はいません。
特に電話で受け付けをする場合、対面ではない応対という特殊な環境が加わるので、文句を言われる時に、「怒鳴られる」とか「詰問される」とかいうオプションがついたりもします。
どうやら人は、姿の見えない相手には強気に出やすいようです。
ご経験のない方もおいででしょうから、説明させていただきますね。
朝一番、初めての電話で、あるいはお昼休み明け一番の電話で、いきなり怒鳴られるところから仕事が始まったら、凹みますよー。
なんとか応対して終わらせた後も、しばらくは気分が沈んで、次の電話を受けるのが面倒になる(怖くなる)場合も、ままあります。
こんな経験を何度かすると、だんだんに「クレーム=怒鳴られる=怖い」という図式が頭の中に出来上がり、少しでも不穏な雰囲気を感じると、
「すわ、クレームか!?」
と構えるようになります。
疑心暗鬼ですね。
そう思うと、鬼(クレーム)でないものも、鬼(クレーム)に見える。
今回は、自分でそうだと決めつける「クレーム」もあるんじゃないですかという話を扱います。

 

 

次へ