「巨人の星」に学ぶ、対人処方

不要不急の外出を控え、自宅にこもることの多い毎日を過ごしております。
比較的早い夜の時間、最近はオンデマンドによる昭和の名作アニメを観ています。
「巨人の星」、おそらく40代以上の方なら、タイトルくらいは聞いたことはあるのではないでしょうか。
1968年から1979年にかけて放送されたTVアニメで、プロ野球巨人軍を目指して猛特訓に励む父と息子の、そして後半は巨人軍に入った息子の、スポーツ根性ものです。
楽しむポイントはいろいろとあるのですが、今回は対人処世術の観点から、「あ~、なるほど。」と思い当たったことについて、書いてみることにします。

 

他人が自分に対してする”嫌な言動”の意味は?

「巨人の星」第35話「魔球対剛速球」の中に、考えさせられるシーンがありました。
主人公の星飛雄馬(ほしひゅうま)は、16歳。
甲子園初出場の青雲高校の投手です。
左の本格派、剛速球投手で、幼いころから父にしごかれて、針の穴を通すコントロールと根性、野球理論を持ち合わせています。
対戦相手は、前年度優勝校の三河高校。
エースの太刀川(18歳)は、きれの良いドロップを決め球にする変化球投手です。
今風に言えば、縦におちるカーブでしょうか。
息詰まる投手戦が続き、太刀川は17奪三振です。
0対0、9回裏二死、打者は太刀川の場面でのこと。
太刀川は、バントをします。
飛雄馬は、軽快なフィールドワークで簡単に処理をします。
そこで、「?」となるのです。

「俺の投手守備が下手でないことを、太刀川は知っていたはずだ。
なのにどうして、バントをしたんだ。」

 

そこで、ひらめくのです。
17奪三振、ここまで投げてきた太刀川は、疲れている。
バントで右に左に揺さぶられては、足がついてゆかないと恐れた。
そして彼は思った。
「自分が苦しい時は、相手も苦しい。」
だから飛雄馬が嫌がるだろうバントを、彼はしたのだと。

飛雄馬は、体力温存しながら投げていたので、太刀川ほど疲れてはいませんでした。
だからそのバントを処理できたのですが、この不自然なバントで太刀川の疲れを飛雄馬は見抜くという筋です。

 

これを見て、なるほどと思いました。
いつも他人に嫌なことを言う人、たぶん嫌がるだろうことを探している人、誰の身の周りにも少なからずいることと思います。
たとえば学歴、たとえば運動神経、スポーツの成績、家庭環境、容姿、所属している会社や団体等々。
こういうことを会話の中に織り交ぜて、相手の顔色をうかがい、相手の弱いポイントを探っているような人。
この人たちのついてくるポイントは、実は本人が弱いところなのです。
自分がそれを弱みに思っているから、相手もきっとそうだろうと思うのです。
それならば、その挑発にのるのは愚の骨頂です。
自分から自分の弱みを見せてくれているのですから、
「ああ、この人はこういうことに、コンプレックスがあるのね。」
と認識して、その次の言葉を選びます。
もしぴしゃりとやりたい(やっても良い相手なら)のなら、そのように。
うけながさなければならない相手であれば、むしろにっこり笑って受け流す。

巨人の星を見て処世術を学ぼうとは思いませんでしたが、さすが昭和の名作アニメ、なかなか深いです。
外出自粛はまだまだ続きそうですから、昭和の名作を楽しむ時間はたっぷりあります。
面白い気づきがあれば、またここで報告させていただきます。

心の3点支持

生きていると、穏やかな日々ばかりではありませんよね。
家庭内のトラブル、仕事上のトラブル、人間関係、家族の延長線上にあるトラブル(妻の夫の仕事関連の交際、子供の学校関連の交際、義理の家族との交際等)等々、おそらく何もない人などいないのではないでしょうか。
私たちは我慢することを美徳として、育てられています。
だから何かあっても、
「こんなの大したことじゃない。忘れよう、気にしない。」
と自分に言い聞かせて、耐える。
そしてつもりつもって、だんだんに塊が大きくなって弾ける。
弾けた先にあるものは、離婚であったり、離職であったり、とにかくあまり気持ちの良い終わり方ではないものです。
今日は、そうならないようにする予防法について、心の3点支持を提案することにします。

 

3点支持

耳にされたことは、ありますか?
元々は岩登りの姿勢に使う言葉で、4肢のうち3肢で身体を支え、残る1肢を移動のために自由にする安全姿勢のことです。
脚立や梯子、電柱に登るような高所作業が必要な業界では、よく聞く言葉です。
3点で身体を支えれば安定する。

これ、心の安定にも使えるなあと思ったのです。
働く人の多くは、起きている時間の半分以上を職場か通勤時間に使っています。
仕事が終われば、疲れて自宅へまっすぐ帰るか、そうでなければ仕事仲間と一杯飲んで帰ろうかとなるのが、よくあるパターンでしょう。
この人の所属するコミュニティ(共同体)は、1つまたは2つです。
まず職場。
家族がいる場合、これに家庭が入ります。
1つのコミュニティにしか属していない場合、人間関係や価値観の醸成等がすべて1つのコミュニティに従属しています。
そこで人間関係がこじれたり、何かトラブルがあったりすると、そのことばかりを考えてしまいます。
けれどもう1つコミュニティがあったら、少しは楽になります。
そこは、職場のコミュニティとは違う人員による構成だからです。
そして職場が仕事をすることを目的としたコミュニティであるのに対し、家庭は家族で生活することを目的としたコミュニティであり、集まる目的が違うので、うまくいけば職場のトラブルによるストレスを軽くしてくれる場合もあります。
但し、あくまでも「場合もある」ということです。
生活には、手間暇、お金がかかるもので、そこにはそれなりのトラブルがあります。
家族である分、他人より遠慮のない生の言葉をぶつけ合い、さらにストレスがたまる場合もあるということです。
そこに、第3のコミュニティを持つメリットがあります。

第3のコミュニティとは、仕事をするためでも生活するためでもない、生きる為にどうしても必要というわけではない目的のための共同体。
一番わかりやすいのは、趣味でしょう。
草野球、サッカー、格闘技、テニス、バレーボール等のスポーツ。
書道、絵画、音楽、文芸等のアート。
料理、手芸等の実用的なもの。
趣味とは少し違いますが、ボランティア活動なんていうものもあるでしょう。
このコミュニティを持つと、仕事にも生活にも関わりのない人たちが相手なので、気持ちを楽にして話すことができるような気がします。
そしてこの3つめのコミュニティは、「好きだから、やりたいからやる」が基本姿勢なので、「楽しいまたはやりがいがある」のが前提です。
そしてその良いところは、興味の対象が増えれば所属コミュニティをもっと増やすことができるし、興味がなくなれば削ることもできる点です。
気楽に楽しみながら、社会と関われる。
この3つめのコミュニティを複数持てば、「3点支持」による心の安全を保てるようになります。

働くということは、起きている時間の半分以上を職場で過ごすということです。
働いてお金を得なければ、生活できないのがほとんどの人ですから、職場のコミュニティに、よくも悪くも影響されるのは仕方のない事でしょう。
生きるのに必要なコミュニティだからこそ、悪い時でも、上手にうけながしたいものです。
心の平穏を保てれば、受け流すのがそれほど難しくはありません。
「そこにいて良い場所」が、他にもどこかにあるからです。
ご家族とうまくいっている方も、保険のためにお考え下さい。
第3のコミュニティ。
かなり良い仕事をしてくれますよ。